本と私と魔法使い
「私も、ハルも、嫌だよ、そんな顔でいられるの。…嫌だよ」

「委員長も悲しんでくれるのー?」

おちょくったように言う羽津に私は言う。
「当たり前でしょう!!」

「優しいね、」
「違うよ、当たり前のこと心配するのは優しいとかじゃないでしょ」

「当たり前、ね。…そんな心配こそ、ほんとに嬉しいんだよ、…嬉しくさせてくれるんだから優しいんだよ…そうだから、アイリスと多季が君の代わりに逝ってくれたんだね」

「…いなくなっちゃったの…?」
「そ、犠牲が必要だからねー。…あ、悲しまなくていーと思うよ…彼らは、そんな事望んでないから」
ぽんぽん、と頭を撫でる。さ、もう、そろそろ行って、しまっちゃうよ。
羽津はそんな事を言って、急かした。私は隙間に体を入れる。

「全ての物語は愛で満ちている」
「は?」

にこっと、笑って、サリサの言葉なんだ、と羽津が言う。


「ありがと」
「うん」

その一言で十分だ。

背中を羽津に押された。
意識が一点に流れ落ちていくのを感じた。

―…
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