レモン色の恋【ショートストーリー】


お母さんが、お父さんと初めて会った日のことを話してくれた。



今まで、冗談で話してくれたことはあったけど、詳しくは知らなかった。



エプロンを握りしめながら、少し恥ずかしそうに話すお母さんが大好きだと思った。



おとうさんに初めて会った日、お母さんは眠れなかったんだって。

お父さん素敵だったんだよ!って顔を赤くしたお母さん。



私はお母さんがひとつ話してくれるたびに、自分の話もした。


つばさ君のこと。



水泳教室のコーチであること。


レモンスカッシュをいつも飲んでいること。


とてもかわいい丸字を書くこと。


私の名前を覚えてくれていたこと。


握手をしてくれたこと。


笑うととてもかわいい顔になること。




話し出すと止まらなくなって、すぐそこにつばさ君がいるんじゃないかと思うくらいだった。


お母さんは、そんな私の話を真剣に聞いてくれた。



…お母さんも会ってみたいな。かっこよさそう!

なんて言ってくれて、私はうれしくてどんどん話した。




その夜は、お母さんと一緒にベッドで眠った。


やっぱりお母さんとくっついて寝るとぐっすり眠れた。


冷たい足をお母さんのふくらはぎの間に挟むと、とても温かくて、すぐに眠ってしまった。








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