短編集


かっきーーん。

金属バットの真芯でとらえた打球は、爽快な金属音を響かせ、ぐんぐんと伸びていく。きれいなアーチを架けて飛んでいく打球はレフトのネットを越えていく場外ホームランとなった。

1年初出場の俺がホームランを打ったことに驚いていたがすぐそれは、チームからの歓声に変わり俺を包み込んだ。が、

がっしゃーん。

とレフトのネットの向こう側、すなわち民家の窓をわってしまったような音が聞こえた。

その音が響くとグラウンドが静まりかえり、

響いた声は、

「何、人様の窓割っとんじゃ!さっさと取りいかんか!」

鬼監督の怒鳴り声が、やまびこのように何度も反響し余韻を残す。

ヒーローから一転、悪者扱いされてしまう。でもホームランはホームランなので、点数は追加される。

そして俺の高校初スタメン、初打席、初安打、初ホームランと初づくしを味わった。

さらにこのホームランは俺にとっての学校生活を変えるものとなる。

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