憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「……だって、尚に会いたくて来たのに、チケットがないからって中に入れて貰えなかったんだもの。妹だって何度言っても信じてもらえなかった」
―ああ、そりゃ、入れないだろうな……。
あたしは思わず心の中で呟く。
更夜先輩や尚は、誠東学園の同敷地に存在する高校、大学の女子に絶大な人気を誇っている。その人気は、他大学にまでも飛び火しているくらいだ。
イベントともなれば、彼らを一目見ようとやってくる子達も多い。迷惑行為を防止することはQSが最も配慮しなければならない項目のひとつだった。
「結衣ちゃんは、ひとりで来たんですか?」
「いいよ。敬語なんて使わなくて。私、まだ17歳だから年下だし」
「えっ!わ……若い!!」
「……もう充分オトナよ。私ひとりで来たの。問題なんて、何もないわよ」
不貞腐れたように頬を膨らます結衣ちゃん。
めちゃくちゃ可愛い。
「結衣、父さん達はいないの?ちゃんと話してから来たんだよね」
「知らない!あんな人達」
ぷい、とそっぽを向きながらも、すぐに甘えるように尚に抱きつく彼女は、どうやら性格については尚とまるっきり似なかったようだ。