大人的恋愛事情
すればいいのよ。
私を捨てて選んだ子なんだから。
「その時に、気付いたって……。結婚を考えられるのは繭だけだって」
「随分都合よくない?」
投げやりに返す私に、詩織が困ったような声を出す。
「確かにそうだけど、でも圭の気持ちに嘘はないと思うよ?」
「だからそれが都合がいいって言ってんのっ」
そう言いながら、コートを手に取る。
「わかってるわよ、都合がいいのはわかってるけど……」
そこで言葉を切るので、無意識に視線を向けると、どこか切なげな困った顔をする詩織が私を見ていた。