大人的恋愛事情
 
「いい?」



「別に今日くらいは……」



そんなことを言う自分に呆れながらも、圭から視線を逸らしたままそばを食べ続ける。



これが詩織なら絶対泊めるだろうし、美貴ちゃんでも泊めるはず。



そう思えば、別に圭だからなわけでもないし。



藤井祥悟だとしても……。



「やっぱ繭のそばが一番旨いな」



そんなことを言われて、いちいち動揺する自分に本当に情けなさを感じながらも、いつもより少し低い、癖のある声の懐かしさに胸がチクリと痛くなった気がした。
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