大人的恋愛事情
 
低く優しい声を出す藤井祥悟は、私をどうしたいのだろうと考えながら、溜息混じりに答えた。



「どっちでも」



だって圭は私の家で寝ているのだから。



『……じゃあ、正面で』



少しの間の後、そう言った男に後ろめたい私は素直に応じて電話を切った。



「12回目……そんなに幸せ逃がしていいんですか?」



隣で呆れたようにそう言う美貴ちゃんに、どこまでも疲れた気分で返した。



「もともと、たいした幸せなんて持ってないから大丈夫よ」



そんな自虐的なことを言いながら、藤井祥悟にどんな顔をして会えばいいのか考えていた。
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