大人的恋愛事情
「これ、部長に持って行って、サイン貰ってきて」
「もう、聞いてます?」
「聞いてるから、お願いね」
書類の束を美貴ちゃんに渡しながら、パソコンを覗いているとデスク上の電話が鳴る。
無意識に手を伸ばした電話は、受話器を持ちあげる前に他の人間が取ったようで音が止んだ。
そのままそこに手を置いて、パソコンに表示される数字を見つめていると、後ろから詩織の声が聞こえた。
「繭、三番に電話」
またもや無意識にその受話器を持ちあげ、三番のボタンを押す。
「お電話変わりました、佐野です」
『昼空いてる?』