大人的恋愛事情
 
「これ、部長に持って行って、サイン貰ってきて」



「もう、聞いてます?」



「聞いてるから、お願いね」



書類の束を美貴ちゃんに渡しながら、パソコンを覗いているとデスク上の電話が鳴る。



無意識に手を伸ばした電話は、受話器を持ちあげる前に他の人間が取ったようで音が止んだ。



そのままそこに手を置いて、パソコンに表示される数字を見つめていると、後ろから詩織の声が聞こえた。



「繭、三番に電話」



またもや無意識にその受話器を持ちあげ、三番のボタンを押す。



「お電話変わりました、佐野です」



『昼空いてる?』
< 42 / 630 >

この作品をシェア

pagetop