大人的恋愛事情
相手の第一声に、思わずパソコンから視線を電話に向ける。
そこには間違いなく三番のボタンが点滅していて、取り間違いではない。
「はい? あの……」
『正面出て左の道、二本目の筋入ったとこの定食屋知ってるか?』
二本目の筋って「まる善」のことだよね?
あまりに軽く聞かれて思わず答えそうになるのを、何とか思いとどまった。
そして聞き覚えのある声に、後ろのデスクの詩織を振り返ると、こちらを見て笑っていて。
呆れた溜息をわざと聞こえるように電話に向かって吐き出した。
「知りません」
『じゃあ昼にそこで、奢るわ』
はあ?