大人的恋愛事情
カウンターに座り、目の前の寿司ネタの並ぶガラスケースを見つめていると、接客係に案内されて藤井祥悟が入って来た。
「悪い、遅くなった」
本当に悪いと思っているのかどうなのかわからない男が、隣の白木の椅子に腰を下ろす。
「どういうつもり?」
開口一番そう言うと、藤井祥悟が私を見る。
「そういうつもり」
あまりに軽く言われて、馬鹿にされてる気がした。
会社近くの店だと言っても、昼のお勧めが二千円もするこんな店には誰も来ない。
その為、他人の目を気にすることがなくていい。
昼のお勧めを二つ注文して、出されたお茶に手を伸ばす藤井祥悟が両手でそれを持つ。