大人的恋愛事情
 
それを横から見上げる女は、着ている服から年齢が想像できる20そこそこの可愛い笑顔。



穏やかな親密な空気に、胸が締め付けられ思わずそのメールを閉じた。



自分のしたことを棚に上げて、どうかとも思うけれどさすがに見ていられない。



私だけに向いていると思っていたはずの藤井祥悟の、熱いのか冷たいのかわからない視線は、そうでなかったのだと思い知らされた。



「……彼女いたんですね」



美貴ちゃんの伺うような声に、返さない私は返さないのではなく返せないだけで。



そりゃあそうだろうと、今頃だけど思った。



どう考えても、私に付き合っている男がいると思っていた藤井祥悟が、29にもなって本気で片思いなんてしていたはずもない。
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