大人的恋愛事情
 
情けない声を出して引き止める私に、詩織が少し笑って呟く。



「意外だった」



「え?」



「まさか繭が圭との結婚を、そんなに迷うとは思わなかったわよ」



「だって……」



「なんだかんだで、圭を忘れてなかったと思ってたから」



そう言われてその通りだと思った。



確かになんだかんでずっと圭を忘れていなかった私。



この一年、圭のトラウマから逃れられなかった私。



私を捨てて若い女を選んだ圭に、悔しくて惨めな思いをしながらも、どこかでやっぱり戻ってきてくれたらと思っていたのも事実だった。



許せないと思っていたのは、そこになにかしらの感情があったから。
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