大人的恋愛事情
向かいで小さく溜息を吐く圭が、テーブルの上のジュエリーケースをパタンと閉めた。
「気にするな」
軽くそんなことを言って、それをポケットに入れる。
そんな圭の行動に驚く私に、向かいに座る男が柔らかく笑った。
「今度は俺が捨てられるってだけだ」
そんな自虐的なことを言いながら笑う圭は、やっぱり大人になったように見えた。
最初で最後の圭と食べる高級料理は、とても美味しくて少し切ない味がした。
ホテルを出て歩きだし、冷たい夜の風に身体を竦めると隣を歩く圭が呟く。
「もっと早くこうしてればよかったな」
確かにその通りかもしれないと思って顔を上げ隣を見ると、歩きながらこちらをチラッと見て軽く首を振った。