大人的恋愛事情
 
「付き合う話、取り消しただろ?」



そう聞かれながら、その胸に引き寄せられ抱きしめられると、涙が落ちるのは嬉しかったりするから。



こんな風に抱きしめられることはもうないのかもと、思っていたから……。



「あの話、結婚に変えていいか?」



低く優しい声で、私を抱きしめながらそう言ってくれる。



「繭?」



「……」



「来てくれたってことは、OKだと思ってもいいのか?」



「……」



「もしかして断りに来たとか……」



「そんなわけないでしょ!」



スーツの生地が頬に触れ、目の前にはネクタイの柄が見えるこの状況だというのに、どうしてもっと素直に言えないのか自分でもホントよくわらない。
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