大人的恋愛事情
絶対に相手を不愉快にはさせないような会話をする男は、営業の中でも群を抜いて成績がいいらしい。
だいたい医療に携わる人間は、基本的に偏屈なやつが多かったりする。
そんな奴ら相手に日々営業している男が……。
隣の同僚の話に適当に相槌を返しながら、漠然とそんなことを考えていると突然繭がこちらを向いた。
「追加で注文しますけど、何か頼まれます?」
メニューを持ってこちらを見る顔には、微塵も笑顔など浮かんでいない。
「じゃあ、俺、梅酒のソーダ割り」
隣の同僚が繭の言葉に反応して、空になったグラスを見せて言う。
「食べ物は?」
「俺はいいわ。こいつ遅れて来てるしまだ食ってねえんだ」
同僚がそう返すと繭が俺を見てメニューを渡して来た。