大人的恋愛事情
「助かった」
「ん?」
「そろそろ本気でうんざりしてたから」
寒そうに肩を竦めて、微かに笑って呟かれる本音に、一瞬前の冷めた態度とは違う僅かな可愛さが見え、動揺する俺を知ってか知らずかさらに笑顔を見せる繭。
「でもまあ、部長の言いたい事もわからなくもないから」
「そうなのか?」
「うん、総務や人事は確かに他の部署に比べると、軽く見られているところあるし」
酔いのせいなのか、二人きりになったせいなのか、砕けた口調で話し出すそんな態度は悪くない。
せっかくの初めての二人きりの時間なのに、いつまでも敬語を使われていたらこっちも気を使う。
「別に軽く見てねえぞ?」
そう言う俺に視線を向けて少し悪戯に微笑む顔は、初めて見る表情。
それだけの事なのに、誘ってみてよかったと本気で思えた。