大人的恋愛事情
そう思えば、どうでもいい気がしてきた。
たいして気にせずにやり過ごしていれば、そのうち噂も消えていくだろうし。
そんなことを考えていた次の日、出社してヒソヒソ聞こえる声を無視しながら昼少し過ぎまで仕事に集中していると、総務に元凶の男がやって来た。
「佐野、藤井来てるぞ」
はい?
パソコンから顔を上げ、入口に目を向けると藤井祥悟がガラスの扉に凭れて、微かに笑ってこちらを見ていた。
そしてガラスから背中を放し、こちらへと歩いてくる。
その悠然とした態度が妙に癪に障る。