大人的恋愛事情
そう思ってカツサンドを頬張りながらチラッと隣を見ると、食べ終わったのか、やっと紙でケチャップを拭いている藤井祥悟が私を見た。
「正面出たとこで待ってる」
持っていた紙で私の口の端のソースを拭きながら、断ったはずの言葉を平然と無視する男を睨む。
「行かないわよっ」
「悪い、もう行くわ」
コーヒーを飲みほしトレーを持って立ち上がる。
「え? まだ時間あるんじゃ……」
驚いてそう聞く美貴ちゃんに、藤井祥悟が笑顔を返す。
「明日、定時に帰れるように、出来る仕事は先にやっておこうと思って」
はあ?
そんな言葉を残しアッサリ、カフェを出て行こうとする。