大人的恋愛事情
 
「そうよ、色々あって疲れてるから、話があるなら……」



「藤井さんと付き合ってんのか?」



テーブルを挟んだ向かい側に座る圭が、そんなことを聞いてくる顔をジッと見る。



柔らかく穏やかな雰囲気。



相手の警戒心を解きほぐすような笑みを見せる圭。



営業はきっと圭の天職だと思う。



どこまでも柔らかく笑いながら、その裏で抜け目ない鋭い洞察力を総動員して、計算式を弾いているような男。



「それ聞いてどうするの?」



伺うようにそう聞くと、フッと笑う圭が少し素を見せる。



それはずっと一緒にいないとわからない微妙な表情の違い。
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