crocus

浮かぶ虚像


俺が珈琲豆販売専門店『珈琲の木』のマスター、じっちゃんこと長谷川毅と出会う話をする前に、俺がどんな思いでその店に入ったのか、そこから振り返りたい。

それは、俺が暗闇がダメになったきっかけに繋がる話。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「じゃーんけーん…ぽん!あいこで、しょ!しょ!しょ!しょ!…………あー!!」

男12人で輪になって、じゃんけんをすれば恭平だけが、グーであっさりと負けてしまった。

敗北者への罰ゲームは、サッカーボールとライン引きの片付けだ。

放課後の月・木・金曜日、休日の土曜日に練習している少年サッカークラブ。

練習時間終了の19時を回ると、誰が言うわけでもなく恒例のじゃんけんが始まる。

低学年を除く、高学年の4~6年生全員で輪になってするのだが、出した手が2つに分かれた時点で勝負は決まり。

負けた人数が何人だろうと、その人数で片付けをする。12人でじゃんけんをすると勝敗が決まるのに時間かかりすぎるからだ。

つまり、この日の負けは恭平1人という、すごい確率を出した。

恭平が項垂れながら、サッカーボールを鉄製のカゴの中に入れていった。

< 171 / 499 >

この作品をシェア

pagetop