アイ・ドール
二人の行為を申し訳なく思う――。
秘書がドアをノックする――中で返事があった事を確認すると、彼女は木目の美しいドアを開ける――。
「社長、高樹 舞様をお連れ致しました――」
「ありがとう――ご苦労様――」
私を中へ案内すると、彼女は深々と頭を下げ、静かにドアを閉めた――。
私の前方には、対面に配されたイタリア製のソファー。その間にガラステーブルが置かれ、その奥に社長のデスクがあり、社長は更に奥に広がる風景を眺めているのか、革製のワークチェアのヘッドレスト越しに僅かに後頭部が見えているだけで、表情を確認する事はできない――。
私の立つ位置から社長までは悠に10メートルは離れており、その床面からガラスウォールが天井まで立ち上がり、社長を中心として左右に奥行きと同じく、10メートルづつ横方向へガラスウォールが広がり、私の左側まで取り囲む――右側には、壁一面にアルミニウム製のキャビネットがしつらえられ、北欧製のスタイリッシュなオーディオビジュアルセットとそれを楽しむ為のカウチタイプのソファーらが整然と配置されている。
広大な眺めと、別世界な空間に息を呑む――。