アイ・ドール

高ぶりのままに、月を見上げた――――。




「――――」



何も語ってはくれなかった――――。




「嫌な女――――とでも言いたいの――――」



何も語らない――――しかしその表情は硬く、更に白く輝きを放っている様に見えた――――。





ちょっぴり――――淋しかった――――。





いつの間にか、歓声は静まっていた――。



白く輝く月の世界に、緩やかな風の音が加わる――――そよぐ風に乗って、ゆっくりとしたピアノの旋律が流れる――――。



最終日、最終公演のみにセットリストに加えられたサプライズの新曲、「わたあめ」の前奏が聞こえてくる――――。



叙情的なメロディーラインと、切ないストリングスが交錯するスローバラード――――。



メインステージから、メロディーに歩調を合わせながら花道を歩き、ドーム中心のセンターサークルへと辿り着き、アイドールが一定の間隔で輪を創り、観客席に向かって躰でメロディーを刻む――――。



初めての楽曲に、センターサークルを囲むアリーナ席の狂信者達も戸惑い、アイドールをただ、見上げる――――。

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