アイ・ドール
「どうして、こんな事をしたの――」
張り上げたい声を押し殺し、アリスに答えを求めた――。
「スリルぅ――」
頬を膨らませ、仏頂面のアリスは反省のない声色で答えた。
「アンタねぇ、スリルで店の商品を万引きされたんじゃたまったもんじゃないよ――」
ふざけた態度のアリスを睨み、川井出は激しく言った。
「アリス、スリルなんてふざけていないで、きちんと謝りなさい――」
私もアリスを強く見た。自分の愚かさを認め、謝罪して欲しかった――私の入店方法、他の従業員の目に触れない「個室」での対応は、店側の特別な待遇であるのは明らかだ。
しかしアリスは、私や店側の想いなど無視して更に悪態をつく。
「んだからさぁマイマイ、スリルって言ってんじゃん。ゲームなの――バレなかったらアリスの勝ち。バレてパクられたらアリスの負け。それだけの事なの――」
「そうじゃないでしょう、アリス」
アリスに激しく迫った――何故、素直に謝れないのか。川井出と多田坂の表情も険しさを増し、今にもアリスの胸ぐらを掴みそうな勢いが感じられた。
けれど、アリスは二人を見下し、挑発する。