マイティガード
トレイシー警部もマドック刑事も彼女との面識はなく、当然わざわざ出向いて挨拶するような間柄であるはずもない。
なぜ彼女がこの部屋へ来たのか。
「…何かご用かな?
えーと、ミス・バネッサ?」
「バネッサ、で結構ですわ。
そちらはトレイシー様に…マドック様。
いつもアネリお嬢様がお世話になっております。」
「あ、ああ……。」
どうも調子が狂う。
まさかいつもお嬢様の面倒を見てくれる警察に改めてお礼を?
そのためだけに?
参ったな、とでも言うように頭を掻き、上手い追い返し方を考えていたトレイシー警部に、
「トレイシー様。」
バネッサは自ら本題を語り始めた。
「私でよろしければ警察の皆様に協力いたしますわ。
別荘の内部に詳しい者が傍にいたほうが都合が良いでしょう。」