あの子の好きな子



「あれっ。今日私と健人だけ?」
「あと二人休みだね」

その日は健人と給食当番。今になると給食当番という言葉が既に懐かしい。私は健人と二人で、給食準備室に向かっていた。給食が乗ったワゴンを、教室まで押してこなければならない。

「配膳も二人でって無理じゃない?」
「んー、俺、デザートと牛乳ね。んで加奈が、ごはんと、中華丼の具と、スープね」
「無理だってば、しかも私重いのばっかじゃん!」

健人とくだらないことを喋りながらワゴンを転がした。牛乳ビンどおしがぶつかって、ガチャガチャと音がする。

「今日プリンかー、おかわり争奪戦だね」
「俺はいいや。メイン中華なんだから、どうせなら杏仁豆腐がよかったな」
「あはは、確かにそうかも・・・」

私が笑ったそのとき、ワゴンが大きくガコンと鳴った。非常灯にぶつかったらしい。

「びっくりした・・・なにか落としたかと」
「俺、加奈轢いたのかと思った」
「大丈夫轢かれてない、あっ・・・ちょっと待ってて、フタとれちゃった・・・」

中華丼の具がたっぷり入ったバケツ型の容器。さっきの振動でフタがとれてしまったので、元に戻そうとかがんだ。

「あれ、はまんないな、ちょっと待って・・・」
「加奈さん、はやくー」
「ちょっと一回出した方が・・・」

一回出した方が、いいと思ったから。一瞬だけ、ワゴンからおろすつもりで、容器を引いた。




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