あの子の好きな子



私はどうすればいいんだろう。

広瀬くんへの気持ちはもう完全にばれていると思っていたから。今ここで、それは広瀬くんのことが好きだからと言わなきゃいけないのだろうか。それとも、また適当にごまかしたら、広瀬くんはなんだそうかと思ってくれるのだろうか。それはそれで問題な気がする。でもここでいきなり告白をしても、そういうことならごめんと言われてしまう気がする。私だって、まだこんな不安定な状態で、告白なんてしたくない。

「あの・・・、そ・・・そのままの意味で・・・」

とにかく何か言わなきゃと思って喋り出した。うそはつきたくない。言える範囲で本音を言おうと思った。

「広瀬くんのこと・・・人として、雰囲気が・・・好きで興味あるっていうか・・・生態が知りたい・・・」
「生態?」
「どんな人なのかなって、気になるすごい・・・、仲良くなりたいと・・・思う・・・っていう」

広瀬くんは、少し首をかしげて何か考えていた。ちょっとだけ笑っている気がする。

「やっぱりお前、変わってるな。お前の言ってること、だいたいよくわからないよ。何考えてんだかさっぱり」

広瀬くんはそれだけ言って、また階段を上り始めた。もしかして本当に、私の気持ちわかってない?広瀬くんが好きで好きでしょうがないって、ばれてないのかな?もしかして本当に、変なやつだけで片付けたのだろうか。それならそれで明日からも話しかけやすいから、別にいいんだけど・・・。

今、もう一度どういう意味だと聞いてくれたのは、ほんの少し私の気持ちに勘付いたからなのかな?もしかしたら、ってちょっとだけ、思ってくれたからなのかな?結局よくわからないという結論になったみたいだけど、どうやらものすごく鈍いらしい広瀬くんが、ほんの少しだけ私の気持ちを意識したのかもしれない。

きっとこの人には、わかりやすいくらいストレートでちょうどいいんだ。また新たな広瀬くん情報を、私は確かにインプットした。


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