あの子の好きな子



「中学から一緒の人」
「・・・一人だけいるけど」
「あ、近いのに一人だけなんだ」
「まあ」
「・・・・・・なんていう人?」

私がその時その人のことを知りたいと思ったのは、広瀬くんのことを一番知っている人だと思ったから。単純にどんな人なのか気になったし、欲を言えば話してみたいと思った。

「知らないだろ。E組の久保遥香」
「あっわかる久保さん!去年となりのクラスで体育一緒だった。きれいな感じの子だよね、髪の長い」
「たぶんそう」

私は、広瀬くんの友達が女の子でうれしかった。男の子より、自分が話しかけられる可能性があるから。中学時代の広瀬くんのこと、いろいろ聞けるかもしれないと、まるで芸能人を追っかける熱心なファンのようなことを考えた。

「ていうことは、家も近いの?」
「歩いてすぐだよ。幼稚園から同じだから」
「わあ、幼馴染みだ!私、幼馴染みって言える人いないからうらやましい」
「・・・あっそ」

広瀬くんがふっと笑った。中学校の話になってから心なしか嫌そうにしていたので、私はほっとした。それでも、あまりに根掘り葉掘り聞きすぎたのと、チャイムが迫っていることもあって、その日は質問を終わりにした。一人で満足気な顔をしながら、手に入れた広瀬くん情報を頭の中で反芻していた。

もっとたくさん、知りたい。
もっと知らない広瀬くんを見てみたいと、心底思った。


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