夫婦ごっこ
やっと恒くんが出てきて私はハッとして
料理をまた温めようとした。

「いいよ。温めなくて。」

「だって…熱くないと美味しくないよ。」

「とりあえず腹に入れば何でもいいよ。」

  つめたい言葉

これをつくる私のことを全く無視している。


ミミちゃんがくれたらおかず


無言で口に頬張っている。
会話もなし

温泉の恒くんはいったいまぼろしだったのかな。


「今日ね 管理人の松田さんが…」言いかけたら

「ごめん 今考え事してるから…
後にしてくれる?」

完全によせつけないバリアがはられた。


一言も話さず食事をして終わったら
「ごちそうさま。」


いつもなら使った茶碗だけでもさげてくれるのに
今日はそのまま部屋のドアをパシッと閉めた。


  バカ……

また泣きそうになった。
好きじゃなかったらこんなに辛くなかったのに
私は契約違反をして

恒くんに恋心を抱いてしまった


だからこんなに悲しいんだ……
心を洗うようにスポンジでコップをごしごしと洗った。
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