夫婦ごっこ
隣の部屋でもぞもぞ動いているから
聞き耳をたてた。

「もしもし……今ついたよ。
大丈夫か?………うん……うん……
そっかよかった。俺も会えてよかったよ……
気になってたんだよくしてもらってたからさ……。
うん……明日も早いんだろ?
頑張れよ………はいお休み……。」


聞いたことのないくらいの優しい声
甘い声……。

多分相手は千鶴さんだと思った。

仕方ないよ
だって身内が亡くなったんだからさ
だけどね……でもね


恒くんが優しい声を出すのがおもしろくなかった。


  嫉妬してる……。


私には
「ただいま。」もなかったのに……。


千鶴さんのキレイな顔が浮かんできてムカついた。

昔からの知り合いだし
仕方ないじゃんそう言い聞かせる自分と


ムカついてる自分が喧嘩し始めて寝られなくなった。

嫉妬なんかしたら怒られそう……。
だって私は


雇われ妻なんだから……。
< 82 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop