まだ、君を愛してる.doc
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「ふぅ、いい天気だなぁ。」
彼女から、突然デートをキャンセルされ、する事のなくなった僕は、ぼんやりといつもの散歩コースである荒川沿いにやって来た。
川を挟んで少し先に、スカイツリーが見えている。天気によっては、先の方が雲に隠れたりするのだが、今日の天気でそれはない。天を突き刺んばかりに、強く、存在を誇示している。
「ここら辺でいいか・・・」
ちょうど川沿いの草もきれいに刈られ、どこに座ってもいい。それに真夏を過ぎたから、蚊に悩まされる心配もない。よく考えもせずに座った。
「あっ。」
そうだった。昨日は雨が降っていた。と言っても、わずかだったから、それを完全に忘れ、勢いよく座ってしまった。当然、僕のジーンズはぐっしょりと色を変える。
「やっちまったぁ。」
不幸中の幸いなのは、濃い色のジーンズを履いていた事だ。まったく知らない他人が見たなら、よほどの事がなければ気づかない。僕の尻をマジマジ見る人などいないだろうから、このまま座り続ける事にした。
鞄から雑誌を取り出す。結婚雑誌と言うやつだ。そう、もうすぐ僕たちは結婚する。今日もその話をしようとしていたのだが、結局こうして一人で見る羽目になってしまった。
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