まだ、君を愛してる.doc
「何か?」
「あ、いや、すいません。東京から来たんですけど、バスがなくて。それでどうしたものかなと・・・」
「そうなんですね。じゃ、私の車に乗って行きますか?」
「えっ、いいんですか?」
初対面の人の車に乗せてもらうなど、普通はないのだが、その美しさにやられていた僕は、二つ返事で申し入れを受けた。
「今、お客さんを送り終わったから、全然構いませんよ。」
「ありがとうごさいます。」
「じゃ、一緒に駐車場に行きましょうか。」
「はい。」
隣を歩くと、とても、とてもいい匂いがする。愛花も同じいい匂いがするが、それとは違う、けど僕をとても惹きつける匂いだ。
「なんだか、本当にすみません。」
初対面でどんな会話をしていいかわからない。けど、僕は会話が途切れた時の、あの独特な間が大嫌いなのだ。だから途切れてしまうと、ついつい今のように謝っていた。
「もう、そんなに謝らなくてもいいですよ。困った時はお互い様。だから、もし私が困った時には助けて下さいね。」
「もちろん・・・あれ、名前聞いてなかったですよね?」
「あ、みり、美しい里と書いて、みりと読みます。」
「珍しいね。普通、みさとって読むのに。」
「はい。でも、その方が音がきれいだって、母親がつけてくれたらしいので、気に入ってます。」
あまり聞かないせいなのか、それとも彼女の母親の言う音がきれいだと言うのが、まんま僕にも適用されたのか、一度で頭に配置された。
「みり・・・さんか・・・。確かにきれいだな。」
「そんな褒めても、何も出ませんよ。」
「いや、何かしてもらおうとかじゃなくて、本当にそう思っただけ。それに送ってもらえるだけで、十分にありがたいよ。」
そう言いながら、僕は彼女の車の助手席に腰掛けた。
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