まだ、君を愛してる.doc
「マジか?」
愛花とは違い、僕は地獄を見ていた。なぜなら空港からホテルに向かうバスがないのだ。一時間に一本、あまりにも少なすぎる本数、何度か見返してみたが、やはり本数は増えない。
「どうすんだよぉ、間に合わない。」
事前に調べておけば良かったが、ここまで少ないなんて考えになかった。着けばなんとかなると思っていた。だから、よく考えもせずクライアントとの打ち合わせ時間を設定していた。
「マズい。マズすぎる・・・」
携帯を取り出した。すると、アンテナが一本しかない。おまけに時折、“圏外”になる始末だ。
「これ、繋がるかなぁ・・・」
何もしないよりはいいと思ったのだが、僕が携帯を耳元にやると、圏外になってしまうようだ。どうやっても繋がらない。
「最悪過ぎる・・・」
タクシーは何台か停まっている。けれども、タクシー代を経費として認めてもらえない。うちの経理は厳しいのだ。結婚でなけなしの貯金も使い果たし、ある種のサバイバル生活を送っている身としては、無駄な出費は抑えたい。念のため、財布を取り出して中身を確認したが、思った通りの金額。帰るまでに使うだろうギリギリの金額、それしかない。
「どうする?どうする?」
マンガではないがオロオロとしてしまう。そこに一人の女性が声を掛けて来た。
「どうかしたんですか?」
「あ、はい・・・」
説明をしようとしたが、すぐには無理だった。なぜなら、その彼女はあまりにも美しく、意図せず見とれてしまったからだ。
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