君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―
いつの間にか夏休みが訪れ、夏祭りが終わった翌日のことだった。突然の全校集会で瀬名結子が死んだと発表された。自殺か他殺かわからない状態だったが、クラスのほとんどが他殺を疑った。素行の悪さは他校生にまで知られていたからだ。

だが、クラスメートの関心を呼んだのは渡会夏樹の不在だった。しかもそれは"警察で事情を聞かれている"ためだという。
「渡会が殺したんじゃねぇの?」
誰からともなくそんな声が聞かれた。さすがの慎吾もそんな疑いを持ってしまっていた。

警察では夏樹が事情を聞かれていた。
「君は瀬名さんのマンションに行ってるよね?」
「はい。行きました」
「どうして行ったの?」
「電話で呼ばれたからです」
「どういう要件でしたか」
「別に、ただの世間話っていうか」
その時、携帯電話の発信履歴とマンションの防犯カメラから夏樹が最後に瀬名結子にあった人物ではないかという疑いが浮上していた。夏樹もそのことは予測できていた。
「君は8時50分にマンションを出たんだよね。その後、10分もしないうちに瀬名さんはマンションを出ているけど、どこへ行ったか知らない?」
「知りません」
「君とどこかで待ち合わせたんじゃないの」
「僕は家に帰りました」
「そのこと、誰か証明してくれる?」
「いません。父も母も不在でしたから」
夏樹は少々イライラし始めていた。
「お父さんが来てくれたらしいよ。ここで心配する前に夜はちゃんと家にいろって話だけどね」
刑事が茶化したのを、夏樹は許さなかった。
「俺はどうでもいいけど、あの人のことをとやかくいうのはやめてください」
「反抗すると良くないよ?」
「あの人がここに来る必要なんかないのに」
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