彼のぽけっと

携帯電話

「ねっ番号教えて。」
ホームルームが終わり、担任の鎌田が教室を出た瞬間にめぐみが私へ携帯をつきだしてきた。
ちなみに、私の席は運良く一番後ろで、めぐみは前の席である。
「え?学校にもってきちゃだめなんだよね?」


「えーみんなもって来てるよ。ほらっ」

とめぐみの指さした先、前の席で楽しそうに話をしている生徒のかたまりでは、番号交換が行われていた。
中学の時校則をやぶったことが無いミユは、周りから「いい子ちゃん」と呼ばれていたが、当たり前の事だとおもいあまり気にしてはいなかった。

しかし、今は高校生。せっかく自分を変えるチャンスなのだ。

「私も買おうかな。」

ぽそりとミユが言うと、すかさずめぐみが顔を近づけて来た。
ふわりと甘い匂いがしる。
石鹸ともちがう、大人の香水のにおい。

「携帯くらいもってなきゃ、彼氏もできないぞぉ」

その言葉に内心動揺したが、平然を装う。
今まで「男子」を「男」として見て居なかったミユは彼氏がほしいとおもった事がなかった。
それ依然に、友達がほしかったからだ。

なのに、なぜか今は彼氏と言う言葉に魅力を感じている。
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