桜の願い
そのときいきなり
開いたドア。
部屋に入ってきたのは
看護士さんだった。
看護士さんは
あたしに
「おはよう」と言う。
あたしも
看護士さんに
「おはよう」と返す。
よくある普通の
やりとり。
だけどあたしたちの
そのやりとりは
普通じゃなくて。
会話をしてるのに
動いているのは
口じゃない。
動いているのは
お互いの手だけ。
あたしたちの会話は
手話だった。
言葉じゃ
伝わらないから。
どんなに頑張っても
伝えられないから。