パラドックスガール
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「……香坂君?」


「あ、ごめん」


考えてるうちに彼女の話は終わったらしい。
木下さんは不思議そうに僕を見ていた。
そんな彼女に笑ってみせる。
それと同時に、彼女の頬が染まったのがわかった。


「ごめんね、僕好きな子いるんだ。」


にこやかに毒を吐いて、相手の息の根を止める。
いつか圭吾がこの光景を目にして、「玲央って毒林檎なのな」って言ってたのを思い出した。


「好きな子って…五組の羽田野さん……?」


窺うようにゆっくり尋ねてくる木下さん。
知ってるなら告白なんてしなきゃいいのに。
言葉にはせずに、「うん」とだけ相槌を打った。



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