パラドックスガール
.




「茗子ー聞いたよー。
朝っぱらから告られたんだって?」


教室に入り自分の机にカバンを置くと、凛子が楽しそうに聞いてきた。


「…」


「茗子?」


「……あ、何?」


が、凛子の声はあたしには届いてなかった。


「何じゃないでしょ。告られたんでしょ」


「ああ、うん」


「…なんでそんなに元気ないの」


「…うん」


あたしはそれしか言えなくて。
自分で聞き返したくせに、あたしの頭の中は違う言葉が反芻し続けていた。




[……決めるのは茗子、でしょ]




玲央の、その言葉だけがあたしの中で響いていた。



.
< 71 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop