穢れなき雪の下で
それが痛くないように、こっちも痛めつけてあげる。

だって、申し訳ないよね。
自分で自分を痛めつけるなんて。

俺の目の前で自慰行為に浸らせちゃったようなものじゃない。
早瀬 怜一郎の名が廃(すた)る。


「そう。
 君はいい子だね」

唇を噛みしめるのをやめさせるためだけに、身体をかがめて、触れるだけのキスをする。


ふわっと、一瞬。
彼女の頬に朱がさした。


良かった。
ねぇ、その唇の傷が気にならないくらい体に傷を作ってあげるから。

それで許してくれるかな?


心の中でそう呟いて、俺は鞭をしならせた。
固まった蝋がばらばらにくだけて落ちていく。


恐怖に染まった彼女の悲鳴が、そう広くもない部屋にこだました。
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