花火の日
 着信は、東京にいる親しい友人からだった。

 「は~い、もしもし」

 少し下がり気味のテンション。それに気づいた友達。

 「どしたの?元気ないじゃん。明日、大丈夫?」

 対照的に、陽気なトーン。声がとても高い。みさこは、しばし間を置く。


 「うん、平気。明日の朝そっちに帰るよ」

 「分かった。待ってるね。じゃね」

 嬉しそうな友人。いつにも増して高まる声。

 「うん、じゃあまた明日」


 1分にも満たないやり取りを終え、電話を切る。

 
 みさこの目には、かすかに涙が浮かんでいた。


 明日は以前から友達との約束があった日。そんな忙しい合間を縫ってでも、この日だけはと実家に戻った。

 
 「それなのに……」
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