あくまで天使です。


私は偉そうに歩み寄り、見事にコンクリートを貫通している翅に手を伸ばした。


触れば触るほど見れば見るほど、本物のようで驚く。


フワフワした羽毛を両側から挟み、力任せに引っ張った。


「………んっ!んーー!」


しかし男が「いでででっ!」と悲鳴を上げるだけで抜ける気配は一向にない。


「てってめぇ!もうちょっと優しくにできねぇのかっ!」


真っ黒な瞳から少量の涙をこぼして訴えてくる男に、私は息荒く


「うっさいっ!黙ってて!」


と鋭く一喝した。


彼はむすりと黙り込んだ。一応助けられているので文句は言わないらしい。



< 7 / 625 >

この作品をシェア

pagetop