あくまで天使です。
私は偉そうに歩み寄り、見事にコンクリートを貫通している翅に手を伸ばした。
触れば触るほど見れば見るほど、本物のようで驚く。
フワフワした羽毛を両側から挟み、力任せに引っ張った。
「………んっ!んーー!」
しかし男が「いでででっ!」と悲鳴を上げるだけで抜ける気配は一向にない。
「てってめぇ!もうちょっと優しくにできねぇのかっ!」
真っ黒な瞳から少量の涙をこぼして訴えてくる男に、私は息荒く
「うっさいっ!黙ってて!」
と鋭く一喝した。
彼はむすりと黙り込んだ。一応助けられているので文句は言わないらしい。