カエルと魔女の花嫁探し
 面と向かって褒められ、セレネーは急に頬を赤らめる。

 本音を言えば自分もこのまま一緒にいられれば、と思っていた。
 けれどカエルの呪いを解きたいという思いが強かった。

 今もそれは変わらないが、こう呪いが解けないとなると心が折れそうになる。
 このままでも良いんじゃないの? と。

(ふう……ダメね。疲れてると気が滅入っちゃう。少し休んでから、解呪の方法を見直していかなくちゃ)

 セレネーは背伸びをしてから、カエルを手の平に乗せた。

「ちょっと休ませてもらうわ。王子もしばらく休んだ方がいいわよ。次の旅に備えて体力を回復させなくちゃね」

「……はい」

 まだ気落ちしているカエルが痛々しく、どうにか慰められないかと思ってしまう。

 気がつくと、セレネーはカエルの頬へ軽くキスをしていた。

「元気出しなさいよ、原因が分かれば次に活かせ――ん?」

 突然、シュウゥゥゥゥゥッという音とともに、カエルの周囲に煙が立ち込める。
 そしてセレネーの体へ重みがのしかかり、思わずソファーへ体勢を崩した。

 徐々に煙が消えてくると……そこには金髪の穏やかそうな顔立ちをした青年が、セレネーを見下ろしていた。細身の体だが肩幅は広く、手足もすらりと長い。

 二人は呆然と見つめ合う。
 先に動いたのは青年の方だった。覆いかぶさるようにセレネーへ抱きつく。

「セレネーさん、やっと元に戻れました! ありがとうございます、これからは一生貴女を愛し続けます」

「ちょ、ちょっと、急に抱きつかないでよ。嬉しいのは分かるけどさ。しかもいきなり一生決められても困るから。少し落ち着いてよ」

 こちらが身じろいでも、青年はしっかと体にしがみついて離れない。
 もう気の済むようにした方がいいようだと悟り、セレネーは体の力を抜いた。

 青年から伝わってくる体温と吐息に、鼓動が早まった。

「あー、もう……しょうがないわね」

 セレネーは青年の背に腕を回し、ためらいがちに彼を抱き返した。




 二人を見ていたネズミは、くるりと背を向け「お幸せに」とつぶやいた。
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