珈琲時間
12/12「レンタルショップの君」
 レンタルビデオ屋で、3年目の年間更新をした日のことだった。
 いい加減、有効期限が切れているなぁと思ってはいたものの、なんとなく借りたいDVDやCDがなかったので、そのまま放置していたことを忘れて、ふらりと立ち寄った際に、更新お知らせの葉書が着ていたなぁと思ったものの、まぁいいや、とカードと一緒にCDを差し出したのだ。

 やる気のなさそうな店員さんでも、ちゃんと確認するところは確認するらしい。
 ちらりとわたしを確認すると、カードを翻し、有効期限の欄を確認しているようだった。

 「あ、有効期限、切れてると思います」

 なんとなく。
 本当になんとなく、相手から言われるのが悔しい気がして(更新してないのに、借りるつもりかと思われるのが嫌だった、のだと思う)先にそう言うと、相手は頷いて、

 「そうですね。更新料がかかりますけど、よろしいですか?」

 よろしいですか、と聞かれるものの、よろしくないと答えたら借りられないので、仕方なく頷く。
 マニュアル通りに「それでは、本日身分の証明できるものを……」と聞かれ、こちらもこの身分証明書というものを入手するために取った免許証を提示する。

 「ありがとうございます。では、こちらお返しします」

 流れ作業のように、カードが返されれ、レンタルする商品が返却期限が明記された袋に入って手渡される。

 そのまま、受け取って帰ろうとしたときだった。

 「あ、少々お待ちください」

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