お姫様だっこ



少し走って近くの空き教室に入った。



研と俊と菜帆とあたしの4人の溜まり場。



悩んだ時は此処に来て窓を開けて空を見上げる。



いつものように窓を開けて空を見上げた。



ひんやりとした風が入ってくる。



心地よい秋の風。




一人そっと涙を流した。









ガラッ!!―




涙が頬を伝って落ちた瞬間…誰かがドアを開けた音がした。




驚いて、涙を流したままの顔で振り向いてしまった。




こっちに近付いてくる人。



「智也…」



ズカズカと歩み寄ってきた。




いつものフザケたテンションでは無く、真剣な瞳であたしを見つめながら。




あたしは急いで涙を手で拭った。



「ごめんね。すぐ教室戻るね!」



そう言って歩き出そうとした時――



ふわっと





あたしの体は包まれた。
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