お姫様だっこ
「鉄はさ…最初は友達として菜帆の相談とかのってたんだよ。俊と喧嘩したぁとか、男ってプレゼント何貰ったら嬉しいー?とかな。それに真剣に答えててさ、いつも話してるうちに菜帆を気になりだしたらしく。気持ち抑えられなくなって告っちゃったとさ」
「そっか…でも菜帆はキッパリ断ったじゃん?もう諦めたかと思ってたんだけど。そうじゃないっぽいなぁって思った」
あたしは手を止めて智也の話を聞いてた。
「アイツ諦めるの無理だって」
「菜帆は俊しか見てないよ?絶対無理だよ‥諦めたほうがいいよ。鉄カッコイイからイッパイ他にいるでしょ?」
あたしは少しムキになってしまった。
でも…次の智也の話で何も言えなくなった。
「そんなんは鉄だって分かってるよ。俺だって美優と同じ事言ったよ。次探せって。でも鉄は…」
鉄が言ったのはこうだった。
『俺は菜帆が好きだ。この気持ちが消えるまで菜帆をズット好きでいる。自分の気持ちに嘘ついて他の女と付き合う事は出来ない。本当に好きになる人が出来るまで菜帆を好きでいるよ。別に邪魔なんかしねぇよ。好きになるだけなら自由だろ?俺は苦しい思いしてもいいんだよ。菜帆が幸せであればそれでいい』
「アイツ馬鹿だろ?」
ははって智也が切なく笑った。
あたしは何も言う資格はない。
鉄の選んだ苦しい道。
でも鉄は…好きな人の幸せだけを考えて頑張ってる。
俊の元カノが現れた時の菜帆に似てる。
《愛する人が幸せなら自分も幸せ》
鉄の真剣な想いがわかるから。
軽い気持ちでそんな事言えないと思うから。
「それが鉄なりの愛の形なんだね…」
あたしは必死に涙をこらえながら智也に一言言って教室を出た。