お姫様だっこ
出て行ってしまった父親は結局、居場所が見つかり帰ってきた。
「帰ってくるのかよ」
心の中でそう思ったけど嬉しい気持ちもあったんだよね。素直にはなれなかったけど。
ずっと家に居てくれるって信じた。やっぱり父親には変わりないし本当は父親を好きだったから。
帰宅して早速、先生に言われた事を父親に話した。
「わかったよ」と微笑んで書いてくれた。
その手紙を読みたいのを我慢して約束通り先生に渡した。
楽しみだった。
卒業式前日―――
とうとうこの日が来た。
「はい!ではそれぞれ手紙を返します。名前を呼ばれたら取りに来てね」
名前を呼ばれて取りに行く。渡された封筒を大事に持って席に着く。
全員の手元に行き渡った。
「読んで下さい!」
カサカサとみんな一斉に手紙を開く。
いつも騒がしい教室が今は静まり返っている。