お姫様だっこ




あたしは何度寂しい思いをすればいいの?



その時流れてた曲は好きじゃなくなった。なるべく聞きたくない。嫌な事を思い出して泣きそうになるから。







パチッ―


テレビを消した。



床に寝転ぶ。




はぁっ…。



この家に居ると溜め息しか出ない。



目を瞑ると


また一つ思い出した事があった。



今度は少し暖かい思い出――――…







小学6年生。




もうすぐ卒業という時、担任の先生が


「提案があります」


突然そう言った。


みんな静かに話を聞く。



「みんなもうすぐ卒業だね。いい思い出を作ってほしいです。それで、おうちの人に手紙を書いて貰って下さい」



先生は活き活きと話を続ける。



「おうちの人だったら誰でもいいです。お母さんお父さん、おじいちゃんおばあちゃん、兄弟…誰でもいいので自分宛てに手紙を書いて貰う。そして封筒に入れて先生に持ってきて下さい。その手紙は絶対まだ読んでは駄目です!!」



えー!?というミンナのブーイングに先生はニコニコして話し続けた。



「大丈夫!卒業式の前日にミンナに返しますよ。その時この教室でそれぞれ読みましょう。楽しみでしょ?」





いい事考えるなぁと感心した。



少し考えて、



父親に書いて貰おうと決めた。
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