お姫様だっこ
――♪
携帯の音で現実に引き戻された。
携帯を手にとって画面を見るとメールが一件。
―慎―
《美優ちゃん、さっきはお邪魔してホントすいませんでした。昴の事ですけど俺に任せて下さい。明日アイツにさり気なく綾サンの事きいとくんで。じゃオヤスミなさい》
《ありがとぉ♪じゃオヤスミー》
簡単に返信して携帯を閉じる。
その後お風呂に入ってスグ寝ようとした。
真っ暗な部屋。
目を閉じるとマタ父の事を思い出した。
父の顔がうっすら瞼の裏に映し出される。
でも少しボンヤリしてる。随分会ってないから顔を忘れてしまってる…?
高校入学式の時までは父は家に居たんだ。
でもマタいきなり居なくなった。気付いたら居なかったんだ。
もう諦めたよ。
親に期待をしたって無駄だって気づいた。
そして、こんな大人にはならないって誓った。
あたしは幸せな結婚をする。
素敵な旦那様との子供を授かって大事に育てるんだ。
そして死ぬまで愛する旦那と一緒にいるの。
あたしの夢――。
普通でいいんだ。それだけで…。