お姫様だっこ



――♪




携帯の音で現実に引き戻された。



携帯を手にとって画面を見るとメールが一件。




―慎―



《美優ちゃん、さっきはお邪魔してホントすいませんでした。昴の事ですけど俺に任せて下さい。明日アイツにさり気なく綾サンの事きいとくんで。じゃオヤスミなさい》


《ありがとぉ♪じゃオヤスミー》



簡単に返信して携帯を閉じる。


その後お風呂に入ってスグ寝ようとした。


真っ暗な部屋。


目を閉じるとマタ父の事を思い出した。


父の顔がうっすら瞼の裏に映し出される。


でも少しボンヤリしてる。随分会ってないから顔を忘れてしまってる…?




高校入学式の時までは父は家に居たんだ。



でもマタいきなり居なくなった。気付いたら居なかったんだ。




もう諦めたよ。



親に期待をしたって無駄だって気づいた。




そして、こんな大人にはならないって誓った。



あたしは幸せな結婚をする。



素敵な旦那様との子供を授かって大事に育てるんだ。




そして死ぬまで愛する旦那と一緒にいるの。



あたしの夢――。


普通でいいんだ。それだけで…。
< 292 / 330 >

この作品をシェア

pagetop