お姫様だっこ



キーンコーンカーンコーン― …




「はーい、じゃ授業終わりまーす。」







「おいしかったね、オムライス♪ねっ、菜帆!」







「…ちょっとコッチ来て」



菜帆に引っ張られて人通りが少ない所に連れていかれた。




「菜帆ー?…あ、また俊と喧嘩したんでしょ!?ダメだよぉ?」




俯いていた菜帆が顔を上げた。




そしてあたしを睨みつけた。




目を真っ赤にして…




泣いてた。…







次の瞬間、あたしの右腕を掴み、袖を捲った。





あたしは焦って腕を引っ込めようと力を入れたけど菜帆の強い力にかなわなかった。






「なに!?、この傷!なんなの?ねぇ!?何でも話してくれるんだよね?あたしが気づかなかったと思ってたんでしょ?野菜切る時見えたんだよ…でもミンナいるから見てないフリしてた。」




気付いて…たんだ…




何も言えず立ち尽くす。



「ねぇ、この傷いっぱいあるよ?昨日付けたばっかの傷とかじゃないよね?何日も前からの傷だよね!?」




「菜帆ごめん…」




「ごめんじゃないよ!!!!!」



菜帆の怒鳴り声に体がビクリと動いた。





「菜帆は…美優のなに?あの日、全部話してくれて何でも言う約束したよね?菜帆達がついてるからって笑顔で約束したよね?なんでなの…?」




顔が涙でグシャグシャになってる菜帆…。









視界が歪む。





あたしも顔はグシャグシャだった。







あたしは何をしているんだろう…








言葉が出ない。
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