お姫様だっこ



あたしが何も言えないでいると、あたしの右腕を掴んだままの菜帆の手の力が緩くなって…

離れた。




とうとう見放されたかな…




そう思いながら俯いたままでいた。






でも違った。



菜帆はそんな冷たい人間じゃないんだ。







「美優、最近は大丈夫って笑ってるから信じてたの。安心してたの。わかんなかった…美優が本当は苦しんでたなんて……気づいてあげれなかったんだね」




菜帆の優しい声……。




菜帆は悪くないのに…



あたしがちゃんと言わなかったから駄目なのに。



"気づいてあげれなかった"なんて…菜帆が責任感じないでよ…‥







そして、菜帆の手があたしの頭を撫でた。



暖かい手…。


「美優…痛いよね?傷も、心も…痛いでしょ?痛い時は痛いって言わなきゃ駄目なんだよ…?」





菜帆はなんでそんなに優しくなれるの…?




「美…優…気づかなくて…ごめ…んね…??」



菜帆がまた涙を流してる。



あたしの為に。


あたしなんかの為に。





「菜帆ぉぉー!!!」



「んっ?」




「苦しかっ…た…」


「うん。」


「言えな…かっ…た」


「うん。…うん!いっぱい泣いていいんだよ?菜帆ここにいるからね?ずぅーっといるよ?」





"ずっといる"―――。




その言葉が嬉しくて、嬉しくて。


泣けた。





菜帆のそばでいっぱい泣いた。
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