愛されたかった悪女

策略

彼女の元へ向かおうとするハヤトを引き留めていたけれど、友人が割り込んできた隙にいなくなっていた。


急いで追いかけ、あの子が使っている部屋の近くまで来ると、ハヤトの怒鳴り声が聞こえてきて足が止まった。


ハヤトの荒げた声に動けなかった。


少しして赤毛の男が、口を押えてふらつきながら出て来た。


目と目が合うと、彼は「失敗だ」と言って去って行った。


この計画は失敗に終わったの?


動揺を抑え、ちゃんと考えたくてその場を離れた。


しばらくして、気を取り直して部屋を出ると、ハヤトは彼女を横抱きにして出て行くところだった。



私は急いで呼び止めた。


「エス、君がやりたかったことはこれだったのか?こんなことをしても俺たちは終わっているんだ 今後は近づいて欲しくない 彼女にもだ」


ハヤトの言葉は冷たく、身震いするほどだった。


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